「場に合った文章に挑戦!
JFS B2教材
執筆依頼を受けて、自分の国の書籍を紹介するための
書評を書く。
設定
場に合ったスタイルで伝える
ねらい
自分の見解を伝えるための文章を、目的や場面に合った
スタイルで書くことができる。
目標
書評を読む
推敲する
書評を書く
Can-do
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●ふりかえってみよう!:文章を書くこと
Q1. 日本語で文章を書く機会がありますか母語ではどうですか。書くとしたらどんな文章を書きますか。
Q2. 日本語で文章を書くことは難しいですか。難しい場合は、どんな点が難しいと思いますか。母語と比
べるとどうですか。
Q3. 目的や場面に合った文章のスタイルとはどんなものだと思いますか。文章を書くときにそれを意識し
ていますか。
●準備: 原稿執筆の依頼
(1) 以前お世話になったことがある日本の出版社の編集者から、下のような依頼のメールが届きました。
依頼内容は何ですか。
メールで紹介されている国際交流基金のWorth Sharing”のサイトを見てみましょう
(2) なたは(1)メールの依頼を受けることにしました。依頼された原稿を執筆するに当たり、次の点を考
えてみましょう
Q1. あなたは今までに原稿執筆の依頼を受けたことがありますか。(1)で依頼された原稿を書くためには、
どんな準備が必要だと思いますか。
Q2. あなたは今までに自分がよいと思った書籍や映画について人に紹介したり、サイトにレビューを書き
込んだりしたことがありますか。そのような書き込みと今回の原稿では何か違いがありますか。
名: 「(国名)を読む」原稿執筆のお願い
○○さま
国際交流出版の高田です。
昨年貴地で開催されたブック・フェアの折には大変お世話になりました。
その後はご無沙汰しておりますが、お変わりありませんか
さて、本日は○○さんにぜひ標記の原稿執筆をお願いしたいと思い、メールを差し上げました。
当社が一般読者向けに発行している小冊子『世界への扉』では、来年度から「(国名)を読む」という新しい連載企画を始め
ることになりました。
この連載では、日本への造詣が深い各国の方々に、日本人がその国の社会状況や人々の考え方などを理解するうえで参
になる書籍をご紹介いただきたいと考えています。
原稿の分量は 500 字程度で、ご紹介いただく書籍の選定はお任せいたしますが、これまで日本で翻訳出版されていないもの
を取り上げていただきたいと思います。(内容によっては将来的に当社より翻訳出版する可能性も検討いたします)
詳しい条件等についてはまた改めてご相談いたしますが、まずは本原稿執筆の可能性についてお知らせいただければ幸いです
お忙しいところ突然のご連絡で恐縮ですが、よろしくお願いいたします。
国際交流出版
高田正明
P.S. ご執筆いただく原稿のイメージとしては、国際交流基金の”Worth Sharing“に掲載されている書評が参考になるかと思
います。
http://www.jpf.go.jp/j/project/culture/publication/supportlist_publish/worth_sharing/index.html
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CHECK!
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1【読む】書評を読む
準備 1 で依頼された原稿を書く参考として、Worth Sharingに掲載されている書評を読んでみましょう。
1.1 下の[A]を読んでみましょう。
(1) 全体をざっと読んで、次の質問についてペアやグループで話しましょう。
Q1. この本のジャンルは何ですか。
Q2. この本を読んでみたいと思いましたか。どんなところに興味を持ちましたか。この本を読むと、日本
のどんなところが理解できると思いますか。
Q3. この本があなたの国で翻訳出版された場合、多くの人に読まれると思いますか。
(2) もう一度読んで、書評の書き方を確認しましょう。次の①~③が書かれている部分を探してください。
①この本の概要
②この本で取り上げている日本の社会状況や日本人の考え方(背景)
③この本に対する評者の見解(評価
(3) ①~③に関する質問に答えましょう。
①この本の概要(あらすじ)の書き方は、次のどちらのタイプですか
()ストーリーを順序立てて詳しく紹介し、結末まではっきり書く。
()登場人物や場面設定を紹介し、ストーリーのポイントだけ書く。
②この本では日本の社会状況や日本人の考え方として具体的に何を取り上げていますか。
③評者はこの本のどんなところを評価していますか。
[A]
すき・やき
新潮社(新潮文庫)/2012 年/
174 ページ/本体 400 円/
ISBN 978-4-10-138761-1
現在、日本で学ぶ海外からの留学生は約 14 万人にのぼる。しかし彼らの日常を描き
出した小説は、まだ数少ない。本書は自らも留学生として来日したのち、小説家となって成
功した作者が、中国からの女子留学生・ココちゃんの発見と喜びに満ちた日々をユーモア豊
かに描いた佳作である。
彼女は日本語を懸命に学び、大学に通うかたわら、高級すきやき店でアルバイトをする。
店員のユニフォームは和服だが、帯でぐるぐる巻きにされた自分の姿がココちゃんには「束ねら
れた長ネギ」みたいに思えてしまう。最初は、すきやきをどのよにお客にサーすればいい
かもわからなかった彼だが、先輩店員たちに可愛られ、徐々に店に溶け込み、常連客
にも親しまれるようになっていく。
一方学で国か留学しき彼女かけ、日語に
れない者同士、ブロークンな日本語で会話しながら、一種の連帯感で結ばれるようになる。
だが、韓国人学生が恋愛関係を求めるのに対し、ココは次第に、すきやき店店長への思慕
を燃やしていくのだった。
日中韓、それぞれの常識や発想の違いが生み出すギャップを面白く浮き彫りにしながら、
作者わばるいぎ出
功している。(NK
http://www.jpf.go.jp/j/project/culture/publication/supportlist_publish/worth_sharing/pdf/vol_4/ws22.pdf より
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CHECK!
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1.2 下の[B]を読んでみましょう。
(1) 全体をざっと読んで、次の質問についてペアやグループで話しましょう。
Q1. この本のジャンルは何ですか。
Q2. この本を読んでみたいと思いましたか。どんなところに興味を持ちましたか。この本を読むと、日本
のどんなところが理解できると思いますか。
Q3. この本があなたの国で翻訳出版された場合、多くの人に読まれると思いますか。
(2) もう一度読んで、書評の書き方を確認しましょう。次の①~③が書かれている部分を探して質問に答え
ましょう。
①この本の概要 書き方は、次のどちらのタイプですか。
()この本の内容を詳しく述べて、そこから見える社会状況を紹介している。
()この本の背景となる社会状況を詳しく述べて、内容のポイントだけ紹介している。
②この本で取り上げている日本の社会状況や日本人の考え方(背景) 具体的に何を取り上げていますか。
③この本に対する評者の見解(評価 この本のどんなところを評価していますか。
[B]
絶望の国の幸福な若者たち
古市 憲寿
講談社(講談社+α文庫)2015
432 ページ/本体 780 円/
ISBN 978-4-06-281612-0
初出:2011 年講談社より単行本刊行
日本ではバブル崩壊後、不況が長く続き、格差社会、ワーキングプアなど、社会的不平
等が注目されるようになった。長期間の経済低迷は、中高年の生活を痛めつけただけで
なく、まっさきに不利益を被ったのはむしろ若者世代だ、とする意見が多い。
実際、新規採用が減り続ける中で、若者は就職難にあえぎ、その多くは非正規雇用者
として不安定な活を強られている。また、高齢化が進むにつれ、世代間の負担と給
い。その理由は何か。
本書にると、世の中でられている若者のイメージと若者実像とのあいだに大きなズ
レがあり、ましてや本人たちの認識とまったく違うという。若者たちは思われるほど不幸ではな
い。人たは身な人ちとの関を大し、小させに足してい。もろん、
彼ら者がな状おかるこよく知しいるしか日本熟し
社会になり、明日は今日よりよくなることはもはや望めないのもよく心得ている。
著者自身も若者で、東京大学の大学院博士課程に在学している。この強みを生かし、
インタビューを通して同世代から本音を巧みに引き出した。地道なフィールドワークと周到な
資料調査のおかげで、これまでとまったく違った若者論を展開することができた。(CK
http://www.jpf.go.jp/j/project/culture/publication/supportlist_publish/worth_sharing/pdf/vol_1/ws18.pdf より
☆“Worth Sharing”のサイトで他の書評も読んでみましょう。
1.3 2 つの書評を読んで、これからあなたが書くべき書評のイメージができましたか。2 つの書評のどんな
ところを参考にしたいと思いますか。ペアやグループで話してみましょう。
☆次のセクションでは自分の国の書籍を紹介するための書評を書きます。どの本を取り上げるか考えておきましょう。
取り上げたい本がどうしても思いつかない場合は、自分の国の映画やテレビ番組を取り上げてもかまいません。
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言葉を広げよう 書評で使う言葉や表現
やってみよう あらすじを書く
(1) 下は 1 で読んだ書評の一部です。あなたが書評を書くときに使ってみたい言葉や表現がありますか。
[A]本書は自らも留学生として来日したのち、小説家となって成功した作者が、中国からの女子留学生・ココちゃんの発見と喜びに満
ちた日々をユーモア豊かに描いた佳作である。(略)日中韓、それぞれの常識や発想の違いが生み出すギャップを面白く浮き彫り
にしながら、作者はいわば比較文化的、あるいは多文化主義的な物語を軽やかに紡ぎ出すことに成功している。
[B]書によると、世の中で語られている若者のイメージと若者の実像とのあいだに大きなズレがあり、ましてや本人たちの認識とまった
く違うという。(略)地道なフィールドワークと周到な資料調査のおかげで、これまでとまったく違った若者論を展開することができた。
(2) 下は書評でよく使われる言葉をカテゴリー別にまとめたものです(1)で使われている言葉の他にどんなも
のがあるか確認しましょう。
*自分が知っている言葉、調べた言葉なども書き込んでおきましょう。
カテゴリー
(1)の例
その他
本の種類
新刊、文庫、新書、ライトノベル、コミック、絵本、児童書/全集、作品集、アンソロジー、
ジャンル
文学、評論、ノンフィクション/小説、物語、童話、随筆(エッセー)、戯曲、詩、日記
古典、現代小説、歴史・時代小説、推理小説、ミステリー、サスペンス、ハードボイルド、SF
ホラー、ファンタジー/自伝、伝記、旅行記、報告(ルポルタージュ)
作品
佳作
ベストセラー、話題作、~賞受賞作、デビュー作、代表作、傑作、佳作、力作、原作
/長編、中編、短編、掌編(ショートショート
作者
小説家
著者、作家、小説家、詩人、随筆家(エッセイスト)、劇作家、ジャーナリスト、研究者、学
者/人気作家、~賞受賞作家、新人、中堅、ベテラン、大御所、国民的作家
作品の内容に
関するもの
~論
主題(テーマ)、ストーリー、設定、場面、構成、展開、起承転結、挿話(エピソード)、描
写、文体/登場人物、主人公/冒頭、結末、クライマックス(山場)/問題意識、インタビ
ュー、フィールドワーク、資料調査、分析、考察、結論、~論
(3)次の文の下線部は作品の内容や描写を形容する表現です。それぞれどんな意味か考えてみましょう。
・マーガレット・ミッチェルの『風と共に去りぬ』は、南北戦争時代のアメリカを舞台に、主人公スカーレット・オハラの波瀾万丈の
半生を描いた大作である。
・カフカの『変身』は、青年がある朝目覚めると巨大な虫に変身していたという奇想天外な物語である。
・『アンネの日記』は過酷な状況の中でもユーモアを忘れずに生きた少女の成長の記録であり、戦争の悲惨さを静かに訴える
名作である。
・ジョン・リードの『世界をゆるがした 10 日間』は、ロシア 10 月革命の現実を克明に記録したルポルタージュの傑作である。
・『源氏物語』は日本を代表する古典文学だが、当時の宮廷生活が色鮮やかに描かれているだけではなく、主人公をめぐる
女性たちの性格・心理描写が秀逸で時代を超えて共感できる。
日本語で本の概要やあらすじを書いたことがありますか。自信がない場合は、書評を書く前に練習してみまし
ょう。 10 ページ
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2【書く】書評を書く
自分の国の書籍を紹介するための 500 字程度の書評を、場に合ったスタイルの文章で書くことができる。
2.1 準備で依頼された書評を書きます。書評を書く時のポイントを確認しましょう。
Q1. この書評の目的は何ですか。どんな本を取り上げて、どんな内容を盛り込むとよいと思いますか。
Q2. この書評の読者はどんな人ですか。自分が伝えたいことを読者に十分に理解してもらうためには、どん
な配慮が必要だと思いますか。
Q3. Worth Sharing”の書評を参考にする場合どんなスタイルの文章を書いたらよいでしょうか。その
ような文章を書くためには、どのような点に気をつけますか。
2.2 書評を書く前に、ペアで内容についてのブレイン・ストーミング(アイディア出し)をしましょう。
*日本語で十分に表現できないところは、部分的に母語を使ってもかまいません。
(1) 自分が選んだ本についてお互いに紹介し合いましょう。た、相手が選んだ本についてどう思ったかも話
してください。
①どんな本か(概要)
②どうしてこの本を選んだのか(見解)
③この本で自分の国のどんなところを伝えたいか(背景)
*話した内容は、書評を書くときの参考にするためにメモしておきましょう。
<内容のメモ>
①どんな本か
②選んだ理由
こと
Can-do
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(2) お互いが選んだ本について、書名の日本語訳と著者名の日本語表記を考えましょう。
書名の
日本語訳
著者名の
日本語表記
.3 場に合ったスタイルの文章を書くためのメモを作りましょう。
(1) 2.2(1)で考えた内容を書評に書くときどんな語彙や表現を使ったらよいか考えて、メモを作りましょう。
*「言葉を広げよう」で学んだ語彙や表現も参考にしましょう。
(2) 書評で書く順番を考えて 〕に数字を書きましょう。
<語彙・表現のメモ>
概要
・あらすじ
見解
背景
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.4 書評を書いてみましょう。
(1) 評を書くときの<目標>を確認しましょう。
1) その本の概要をわかりやすく紹介し、自分の見解もはっきり書く。
2) 自分の国の社会状況や人々の考え方を、外国人にわかるように書く。
3) Worth Sharing“の書評などを参考に、場に合った語彙や表現を使って書く。
(2) 2.3(2)のメモを参考に下のフォームに書評を書いてみましょう。
*パソコンやタブレットで入力してもかまいません。
(国名) を読む (名前)
書名
原題:
日本語訳:
著者名
原語表記:
日本語表記(カタカナまたは漢字)
[本文]500 字程度)
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(3) 書き終わったら読み返して、<目標>が達成できているか自己評価しましょう具体的なコメントも書い
ておきましょう
達成度
1
:まだ難しかっ
2
:だいたいできた
3
:十分にできた
自己評価
他者評価
1) その本の概要をわかりやすく紹介し、自分の見解もはっきり書く。
2) 自分の国の社会状況や人々の考え方を、外国人にわかるように書く。
3) Worth Sharing“の書評などを参考に、場に合った語彙や表現を使って書く。
1 2
3
1 2
3
自己評価コメント
他者評価コメント
3.【 書く】書評を推敲する
3.1 書いた書評を、ブレイン・ストーミングをしたペアで交換して読み合いましょう。
(1) 相手が書いた書評について、<目標>がどのぐらい達成できているか評価してみましょう。
目標が達成できていない点があれば、具体的にどこをどのように修正したらよいか考えてみましょう。
*評価の結果は相手に伝えて、お互いに「他者評価」の欄に記入しましょう。
(2) 互いによくわからなかった点を確認したり、修正についての具体的な提案をしたりして、原稿をどのよ
うに修正したらよいかを一緒に考えましょう。
*まず内容や構成について話して、それから語彙や表現の使い方について話しましょう。
3.2 ペアで話したことを参考にして、自分の書評直しましょう。
3.3 直した書評を同じペアでもう一度交換して読み合い、変わったところを確認しましょう。
3.4 直した書評をクラスの他の人と交換して読み合って、感想を話しましょう。
Can-do をチェックしましょ
Can-do
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小説等の書評のために、本の内容(あらすじ)を 300 字程度にまとめて書くことができる。
自分がよく知っている小説や映画の「あらすじ(概要)をまとめてみましょう
(1)「あらすじ」を書く前に、内容を次のポイント(5W1Hで整理してみましょう。
①場面設定(い When・どこで Where
②登場人物(だれが Who
③主な出来事( What をした)
④その他の重要な情報(なぜ Why・どのように How
(2) 1 で読んだ 2 つの書評を参考に、「あらすじ」を書いてみましょう。
文字数:300 字程度(上記の書評の「あらすじ」部分より少ないです)
*パソコンやタブレットで入力してもかまいません。
(3) 自分がいた「あらすじ」を他の人と交換して読み合って、感想を話しましょう。
やってみよう あらすじを書く
Can-do
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目標
1:まだ難しかった 2:だいたいできた 3:十分にでき
自分の国の書籍を紹介する 500 字程度の書評を、場に合ったスタイルの文章で書くこ
とができる。
評価 1 2 3
理由・感想
【チェックポイント】
・その本を読んだことがない人にわかりやすく内容を紹介できましたか。
・その本に対する自分の見解がはっきり書けましたか。
・自分の国の社会状況や人々の考え方を、外国人にわかるように書けましたか。
・”Worth Sharing“の書評などを参考に、場に合った語彙や表現を意識し書けま
したか。
書評を書く前に”Worth Sharing“の書評を読んだことは役に立ったと思いますか。
書評を書いたことや、書くプロセス(ペアで話してアイディアを出したり、修正したこと)に対する感想など
目標についてふりかえってみよう
自分の見解を伝えるための文章を、目的や場面に合ったスタイルで書くことができる。
この教材で学習したことは、日本語で文章を書ときに役に立つと思いますか。どんな点が役に立ちそうですか。
これから日本語の文章を読むときは、どんな点を意識したり、どんな点に注目したりするとよいと思いますか。
私だけのフレーズ
Can-do
Can-do をチェックしましょ
協力/素材提供
表紙 クスタ https://pixta.jp/
p.3 書影:講談社 書評:野崎歓(国際交流基金 “Worth Sharing” vol.4 所収)
p.4 書影:小学館 書評:張競(国際交流基金 “Worth Sharing” vol.1 所収)